「人を伸ばす力 - 内発と自律のすすめ」を読んで

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人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

人を伸ばす力―内発と自律のすすめ

TL;DR

  • 内発的動機づけはGood!統制はBad!
  • 内発的動機づけを持って取り組むと個人的な成長だけではなくより良い結果も導く。
  • 自立性の支援は内発的動機づけを維持するために極めて重要。
  • 上位の立場で成功する人は「自律性を支援する態度」を持っている。

この本を選んだ理由

  • 織論や人事関連の話にてこの本がちょくちょく話題になり、気になっていた為。

印象に残った点

動機付けられる際は自律的か統制されているかという区別が重要(第1章)

- 動機づけは2パターン存在する。
 1. 自律的=自由に自発的に行動していること。
 2. 統制=圧力をかけられて行動していること。

- 統制の中にも2つのタイプがあり、一方が存在すると他方も存在する関係。
 1. 服従:権威者の考えが実現されるように従う行動。
 2. 反抗:期待されていることと反対の行動。

- 自律的に振る舞う→自らが行為の主体→本当の自分に基づいて行動する。
 ⇒ 自律的というのは行動の開始から調整のプロセスが自己に統制されている時だけ。

- 家族という船の「乗組員」であるという認識はあるが、自分の船の「船長」という認識はない
 ⇒ 組織に属するだけと考え、個人を意識することが欠けている場合もある。
  • 動機づけを深く考える機会がなかったので確かに…と感じる内容だった。
  • また、大人になり、自分の内なる感情から来るモチベーションを軽視/抑えつけし過ぎていたと感じ、もっと自律的に行動したいと感じた。

報酬によって内発的動機づけを低下させてしまう(第2章)

- 行動主義は人は学ぼうとする意欲がそもそもないことが前提。「動機づけにる方法は行動に応じた報酬を提供すること」という考え。
 ⇒ 小さいことは何事に関してもキラキラとした眼で取り組むため、行動主義の考えが正しいとは思えないというのが筆者の考え。
 
- 内発的動機づけとは?
 ⇒ 活動それ自体に完全に没頭している心理的な状態であり、何かの目的(お金を稼ぐ、絵を完成させるなど)に到達することとは無関係。
 
- 報酬がない状態で楽しんでいたパズルもクリアごとに報酬が貰えるようになると報酬に依存してしまう。
 ⇒ つまり報酬が内発的動機づけを低下させる。自由な行為を報酬によって外部から統制される行為へ変わる。
  • 小さい子供のキラキラとした眼で取り組む姿。これが内発的動機から来るのか…。
    • 大人になっても子供のような眼をして仕事をしている。という例えを聞くが、これは内発的動機づけが出来ているからこそなのだろう。
  • 内発的動機づけができているのであれば報酬は与えないほうが良い。というのは子育て中の私には考えさせられる結果。
    • 子育てにしろ、メンバーとの関係性にしろ見極めが大事だなぁ。

統制された活動に携わることで熱意や興味を次第に失う(第3章)

- 人を統制するために下記を行うとも内発的動機づけを低下させる。
  - 金銭、罰、脅し、締切設定、目標の監視、評価など。
  ⇒ 上記のことは人に圧力をかけてしまう。

- ただ、内発的動機づけを弱めないようにするために人々に好きなことを好きにさせるべきではない。
 ⇒ 人の精神を抹殺することのない方法を検討すべき。
   つまり、組織の在り方や行動を制限しつつ、自律性を高めるためには選択の機会を与えること。

- 制限の設定は責任感を育てる上で重要だが、やり方によって問題となる。
 ⇒ 相手を操作する対象と見なすことなく、制限される側の立場に立ち、相手が主体的な存在であることを認めることが大事。
   これによって、偽りのない自分であることを損なわずに責任感を育てることができる。
  • 現在の職場にて締付け(統制)しすぎだな…だからモチベーション上がらないのか…と感じていたがまさに↑のことをやっていた。
  • 好きなことを好きにやらせるという結論でなくて良かった。「制限しながらも選択させる」というのが肝か。なるほど。
  • 自律性を支えることは強制することより難しいとのこと。そりゃそうだ。言うだけではなく、相手の状況をを理解し、適切な支援が必要だもんね…。

内発的動機づけは個人的な成長だけではなくより良い結果も導くが、外発的動機づけは悪い結果を導く(第4章)

- 「イキイキとした気持ちになる、興味を感じる、夢中になることを見つけてフローを体験する。いずれも結構なことだが、それがいったい何になる?」とい内発的動機づけを批判する人達がいる。
  - この人達は結果だけを重んじており、利益ばかりに目がいっており被雇用者の専門性や個人的な成長には目もくれていない。
   ⇒ 実際、内発的動機づけは「豊かな経験、概念の理解度の深さ、レベルの高い創造性、より良い問題解決を導く」という結果も伴う。

- 逆に外発的動機づけは内発的動機づけや課題の遂行を低下や、創造性や概念理解、柔軟性を必要とするような課題の成果に妨害的な効果をもたらす。

- 外発的動機づけ(報酬や罰など)を用いる際は下記3点の注意が必要。
  1. 報酬を使いだしたら簡単に後戻りできない。
  2. 一旦報酬に感心を向けると報酬の獲得するための手っ取り早い方法を選んでしまう。
  3. 報酬は成果とのバランスをみる必要がある(方向付けのためではなく実績に応じて報酬を出す)。
  • 「絵を描くことに内発的動機づけられている人は、単に精神の高揚を経験するだけでなく、真の芸術を生み出す」とロバート・ヘンリーの持論がある。これは素晴らしい言葉。楽しく働くことを考えていきたい。
  • 外発的動機づけをしないといけない場合もあるとは思うが、その際は注意して扱う必要があるなぁ。

行動と結果のリンクが明らかでないと動機づけが根本から失われる(第5章)

- 良い子でいたらオモチャを買うというのは結果は分かるがどのような行動か不明瞭。
 ⇒ このような場合動機づけが効果的にならない。
  • なるほど。外発的動機づけは何の対価なのかを明確にしないと効果が出づらいのか。ただ、相手が理解できる状況なのか?にもよるなぁ。

有能感(コンピテンス)と自立性の両輪が大事(第5章)

- 有能感(コンピテンス)とは?
  - 「人は環境と効果的にかかわり有能でありたいという気持ちであり、人の基本的欲求という主張」のこと。
   ⇒ 人は「有能感への欲求→達成感を得る」ために積極的に活動に取り組む。

- 有能感は「最適の挑戦」のときにもたらされる
  ⇒ 有能感を感じるのはトップである必要はないし、優秀な成績を取る必要はない。
    意味のある挑戦を見つけ、ベストを尽くすだけでよい。

- 有能感から来る内発的動機づけを促進するためのフィードバック(褒め言葉)は統制的にも非統制的にも働く。
  - フィードバックが統制的だと内発的動機づけを低下させるので注意が必要。
  - 統制的か非統制的か曖昧だと男女による受け取り方が異なりら女性のほうが統制的と受け取りやすい傾向がある。
   ⇒ 褒め言葉にせよ、報酬にせよ、制限にせよ、相手を統制させようとするもくろみは極力排除する努力が必要。

- 自律性のない有能感では有能な駒でしかない
 ⇒ 自らの意思で自己決定できると心から感じないと意味がない。
   そのため、自律性と有能感のどちらかが欠けても意味がない。
  • 有能感のところ、メチャ良い事書いてあるなぁ。自分にとって意味のある挑戦で達成感を得れば更に有能感を求め…とポジティブなサイクルが回ると感じる。
  • 少し古い本なので社会情勢が今とは違うので性差については鵜呑みはできないが面白い結果。
  • 「統制」はこの本での重要なワードだなぁ。統制を感じさせないフィードバックが求められることは常に考えていきたい。

否定的なフィードバックは有害であるが、フィードバックする側が見過ごして良い訳ではない(第5章)

- 否定的なフィードバックをしないといけない内容であれば本人は恐らくその事の重大さを理解している。
 ⇒ 自立性を支援するならば話を聞いてみるだけでも良い。
  • つい反射的に口を出してしまうが、話を聞くことで自律的に考えてくれるのであれば聞くだけでも効果はありそう。

内在化は2つの形態「取り入れ」と「統合」がある(第7章)

- 内在化とは?
 - 個人が社会の価値を身につける固有なプロセスであり、発達しつつある子供達が外的な援助を内的な援助へと変換する能動的なプロセスのこと。
 - 内在化は本人が行うものであり外から内在化させるのではない。
  ⇒ たいていの活動はけっして面白くない。
    ただ、社会の役割を果たす上でそういった活動は重要であり、内在化が肝となる。

- 内在化の2つの形態
  1. 取り入れ:ルールを噛み砕かずに丸ごと飲み込むこと。
  2. 統合:ルールをよく噛んで消化すること。
   ⇒ 自己をルールに統合することが最適な形の内在化。
  • ルールを守ることが目的となっている人がおり、何を達成するためのルールなのかを意識できていないという状況をたまに見る。まさに取り入れと統合の違い。

自立性の支援は内発的動機づけを維持するために極めて重要(第7章)

- 根の生えたアボカドを大地に植えれば成長してアボカドの木になるのはアボカドの性質であり、これは自然に起きる
  - ただ、枯れたり腐ったりすることがあるのは、養分や日光、水が必要であり、アボカドが自ら自然に成長していくために必要なものがある為。
    ⇒ 人に対しても同じ。発達途上の人が自然に発達するためには、心理的な栄養(自律、有能さ、関係性への欲求という心理的欲求)が必要。

- 内発的動機づけを維持するために自立性の支援は極めて重要
  - 自立性の支援とは他者を自分自身の満足のために操作すべき対象とするのではない
  - 人間として支援する価値のある能動的なエージェントとして認めながら関わっていくこと
   ⇒ 自立性を支援する行動(理由付け、承認、および選択)のある状況下で規範を内在化した場合、その規範を統合しすい

- 自立性の支援=自由放任ではない
  ⇒ 支援する側の「責任」を考えると支援しているのか?自由放任なのか?が見える。
    「責任」は立場によって変わるように、支援の仕方も変わる。
  • アボカドの例分かりやすい。人は成長する性質は誰しも持っているが、心理的な栄養の良し悪しによって枯れたり腐ったりするのか。
  • 統合する上で支援する活動が必要不可欠であり、親、上司といった立場が違えば責任も違うので支援の仕方も違うということか。常に最適な支援をするのは難しいんだろうなぁ。

自我関与は内発的動機づけを低減する(第8章)

- 自我関与(ego involvement)とは?
 - 自分に価値があると感じられるかどうかが特定の結果に依存しているプロセスのこと
 - 例えば、成績に自我関与していると、他のクラスメートのテストの成績をたえずチェックし、そうしてはじめて自分が「まずまずの」できだと知ることができる。
  ⇒ より自律的で自己決定的であるためには自我関与から距離をおき、少しずつ自我関与を減らしていく必要がある。

- 自我関与は内発的動機づけの低下だけではなく、別の影響もある
 ⇒ 学習や創造性を損ない、柔軟な思考や問題解決を必要とするあらゆる課題での作業成績を低下させる傾向がある
  • 例え話が身に染みる自分は自我関与から距離を置く必要あると感じた。周りに目を向けすぎず自分の価値とは何か?を考えてたい。

3つの内発的意欲と比較して3つの外発的意欲のいずれかが突出して高いとき精神的健康も低い傾向にある(第9章)

- 3つの内発的意欲とは「意味のある関係」、「個人的成長」、「社会への貢献」
- 3つの外発的意欲とは「金」、「名声」、「美貌」
 - 外発的意欲をもち、それを達成できると硬く信じても精神的な健康は低い。
  ⇒ 精神的健康の最も重要な要因は達成可能かという期待値の高さではなく、どのタイプの意欲を強くもっているかということ。

- 自律性の支援や関与が十分でないと、取り入れや随伴的な自己の感覚がもらさたらされるだけでなく、より外発的な志向性を促進する
  - 内発的な人生の目標が強く持てず、精神的な健康のためのしっかりとした基盤が欠けてしまう

- 外発的価値の統合(外発的価値と内発的価値とのバランスをとること)は親の養育態度がかなり影響する
 - また、外発的価値>内発的価値になると、内在化プロセスがうまく行かず外発的価値に合わせて生きようとする
  • 子供に対して内発的意欲を支援する親になりたいし、自分や妻の内発的意欲を大事にしていきたい。
  • 内発的意欲って本当に大事だな。そのためにも周りの支援がないといけない。
    • ただ外発的価値に縛られている自分が子供をうまく導けるのか?とても心配になった、まずは自分から考えを変えないといけない。

自律性を支援する管理者の元で働く従業員はより高いレベルの満足とやる気を示す(第10章)

- 自律性の支援とは?
 - 「選択の機会を与えて意思決定への参加を促進させ、活動内容を決定させること」である

- 自律性を支援する管理者の元で働くメリット
  - 従業員は会社をより信頼し、給料や福利厚生のことにとらわれず、より高いレベルの満足とやる気を示す
  ⇒ 管理者が自律性を支援できるよう訓練することで、彼らの元で働く人達がより優れた成果を上げることができる

- 管理されることに慣れている人に対して自律性を支援することは特に難しい
  ⇒ 対応としては忍耐強く取り組む!
  • 相手の立場が分かり、その立場から自律性の支援が出来ることが優れた管理者ということか。そんな人いるのかなぁ。
  • 忍耐強く取り組む必要があるのか。なるほどなぁ。管理者の立場でいた時、悪いスパイラルになっていたなぁ。この本を読んだことでもう少し粘り強く対応すればよかったと感じた。

上位の立場で成功するには「自律性を支援する態度を持っている」という共通点がある(第11章)

- 自律性を支援する態度を持っていることが上位の立場で成功するための要素
 - 下位の人達の業績や成長、健康に留意し、自律性を支援する態度を持つことが必要
  ⇒ 自律性を支援するということは他者の視点から状況が理解できるようにオープンに話を聞くことから始まる。
  • オープンに話を聞き、他者の視点から状況を理解し、そして自律性の支援をする。うん、全部難しそう。話を聞き出すスキルが必要だし、他者の視点から考えるのも一筋縄ではいかない。まずは話の聞き方学ぼうかな。

本当に変わろうとしていない場合は、どんなテクニックを用いても失敗する(第12章)

- 自分の抱える問題を別の誰かが成功した際に用いたテクニックを真似るだけでは成功しない。
 ⇒ そもそも内発的動機づけがないと成功しないし、テクニックも自分にあっていると感じさえすれば真似ても真似なくても良い。
  • 結局は「内発的動機づけ」。全てここから始まる。

ある状況になり、すぐにまわりの人々を支配し始める人は自律的であるとはいえない(第13章)

- 真の自律性には関係性が伴い、他者への尊重を忘れない。
  - 何らかの内的あるいは外的な力によって圧力を感じるから、他者を統制しようとする。
  • 特定の人を思い浮かべ、妙に納得してしまった。その人は圧を感じ、周りを統制しようとしているのかもしれない。そう考えると優しく接することができそう。

今後

  • 話の聞き方を学びたいと感じた。次にテック系ではない本を読むときはそういった題材の本を読みたい。